コラム

【コラム】元アルバイトの男性が休職取得できず会社を提訴

「休職」。

それは、「育休」や「産休」などの場合を除き、精神的、あるいは肉体的に様々な問題を抱えることになってしまった従業員の”逃げ場”の1つであり、社会人としてもう一度真っ当に仕事ができるよう、社会復帰を目指すまでの”休養期間”として非常に重要な役割を果たす「セーフティネット」のうちの1つです。

そんな休職のあり方について、雇用形態の問題とも関連した大きな問題提起がなされました。

カー用品販売店を展開する「オートバックス」の店舗勤務をしていた元アルバイト店員の男性が、当該店舗の正社員から嫌がらせ等を受けたことにより精神的に不安定となり、「不安障害」を負ったことで、自宅療養を余儀なくされたのにも関わらず、「休職」を認められず、「雇い止め」となったのは不当だとして会社を訴えたのです。

この男性の主張は、正社員には休職が認められ、非正規雇用の人間には休職が認められないというのは、労働契約法20条が禁じている「不合理な格差」であるとするのもので、運営会社を相手取り、解雇が無効であることを確認する旨や未払い賃金の支払いおよび慰謝料などを求めるというものです。

事の発端は、従業員間での金銭の貸し借りでした。

原告の(元アルバイトの)男性は、生活費に困っていた同僚の従業員から相談を受け、会社にその従業員への援助等を相談したものの受け入れられず、最終的に同僚3人でお金を出し合ってその従業員へ貸し付けました。

その後、お金を借りた従業員が、返済をしないまま会社を退職し、督促にも応じなかったため、原告男性は会社側に何かしらの補填を要望します。

それから会社側は、原告男性に事情聴取をした後、従業員間の金銭貸借に対する補填はしないとする一方で、原告男性が「退職」するのであれば一定の金銭を支払うという「退職勧奨」を行うようになりました。

原告男性はこれに応じず、復帰後最初の出勤日に通常通り出勤したところ、会社側から「契約できないため帰って欲しい」と言い渡され、雇止めを宣告されたとしています。

その後、原告男性は東京都労働相談情報センターに相談をし、間に入ってもらうことで会社側は雇い止めをいったん撤回します。

しかしその一方で、通常の朝礼に参加させてもらえない、他の同僚には与えられているロッカーが与えられないなどの”ハラスメント”行為が行われ、原告男性は心身に不調をきたすこととなります。

原告男性は病院で「不安障害」のため1ヶ月の自宅療養が必要と診断され、その間の勤務について「休職」扱いとする様会社側に求めたところ、非正規社員であることを理由に、会社側は休職既定の適用を拒否したのです。さらにその半年後に、会社側はこの原告男性を解雇しました。

これに対し原告側代理人弁護士は、「合理的理由がなく一方的に不当な差別が行われている。」と指摘。別の代理人弁護士は、「この問題は社会的問題であると捉えている。社会全体で非正規差別を是正したい。」と話しています。

この件に、会社側は「コメントできない。」としており、「必要があればフランチャイズ本部として指導する。」としています。

働き方改革や非正規雇用の社会的弱者化が様々なひずみを生む中で、こうした問題は今後1つの指標ともなる可能性のあるものだと考えられます。

こうした問題は、薬剤師さんをはじめとする他業種でも、パートや一時雇用として勤務する人たちの誰にでも起こり得るものです。

2019年4月からは、有給制度についてもそれまでより厳格な運用が会社に求められるようになるなど、働き方改革が進む中、こうした不当な扱いを受けた場合には声を上げる他手段はありません。

非正規雇用であろうとも、不適切な処理や不平等な扱いをされた際には、泣き寝入りすることなく、自らの権利はしっかりと主張していかなければなりません。

本件に関しても、引き続き追っていきたいと思います。

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