『薬剤師国家試験』に合格したあなた、本当におめでとうございます!
あなたは「一生モノ」の資格を手に入れました。
これであなたの人生も安泰。経済的な不安とは無縁のバラ色の人生が待って、、、いるでしょうか?
「薬剤師になれたからにはもう一安心。」そんな感覚を持っていませんか?
国試に向けた勉強中心の苦しい生活からも解放され、これからやっと羽を伸ばしていこうと思っていた矢先に、敢えて少しクギを刺す。今回はそんなお話をしておきたいと思います。
今回のテーマは『薬剤師としてのキャリアプラン』についてです。
今後あなたが薬剤師としてどのように”自己実現”を成し、”悔いのない人生”を送っていくのか、そんなことを早い段階から考えておくことで、キャリアにおけるミスマッチをなるべく減らせるようにするということが目的です。
これからの時代の薬剤師さんというのは、これまでの「薬剤師”像”」が参考にならない程、大きな変革の時代に生きていくことになるのは確実です。(本文中にて詳述)
したがって、この記事が、これから薬剤師として社会人生活を送っていくことになるあなた、あるいは社会人になりたてで将来に対する不安が拭い切れないあなたが、自分のキャリア=「自分がどんな年齢の重ね方をしていくのか。」ということを考えるきっかけになってくれれば非常にうれしく思います。
‐ Contents (目次) ‐
薬剤師の「売り手市場」は早晩、”終焉”を迎える
現在の薬剤師の就職・転職状況というのは、客観的に見ても明らかに「売り手市場」です。実際に薬剤師を採用する立場であるファーマンが身にしみて感じていることであり、世の採用担当者も間違いなく賛同してくれるでしょう。(薬局中心の情勢。病院や研究職等一部の職種は除く。)
一時期の激しさ(売り手市場の度合い)に比べると、少しは落ち着いたとは言え、基本的な構造は変わっていないと言って差し支えないかと思います。
その一方で、私は現在の様な「薬剤師は就職・転職市場において引く手数多(あまた)の状態で、働く場所を自由に選択することができる。」という売り手市場の環境は、近いうちに終わりを迎えると予想しています。
その理由は、科学技術の進歩や社会情勢の変化、それも”もの凄いスピード”での進化や変化が、薬剤師の職場を取り巻く環境を大きく変えてしまうからです。
詳しくは↓コチラ↓で解説していますので、気になる方は是非読んでみてもらえればと思います。
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薬剤師の未来を大胆予想!これからの薬剤師におすすめの『就職先』と『必要な能力』将来性を見極める!
いきなりですが、これからの薬剤師に求められる”素養”とは、いったい何でしょう? 「素養」:平素の修養によって身につけた教養や技術 「薬剤・薬学に関する深く幅広い知見?」「医療技術の進歩に貢献するための ...
では実際に、「気がつくとそんな時代を迎えていた。」という時に、それまでの売り手市場時代の感覚のまま仕事をしている薬剤師さんたちはどうなっていくでしょうか。
簡単です。”需要”が無くなります。
会社が薬剤師を”選べる”時代では、なかなか採用してもらえない薬剤師があふれるようになる、ということです。
ただ薬剤師資格を持つだけの人というのは、他の優秀な薬剤師との競争に打ち勝つことができず、なかなか働く場所が見つからないという状況に陥ってしまうのです。
これからの医薬業界においては、それまでの薬剤師に求められてきた社会的役割が、現場でのオペレーションの効率化やAIの導入などによって変化することはもとより、どんな会社・医療機関であっても、「”ただの薬剤師”は特に必要ありません。」といった感覚になる、いわば”買い手市場”の時代に突入していくことになるわけです。
それが現実です。
「そんなことにはなり得ない。」そう感じた人は、ここから先を読む必要はありません。あなたの時間を無駄に浪費させてしまうだけです。
今回は、せっかくこの記事を読んでくれているあなたに、1つの”示唆”として実感をもってもらえるように、あえて厳しい姿勢でお話していきたいと思いますが、「今は売り手市場の薬剤師といえども、自己研鑽を怠らず、しっかりと社会情勢を見極めながら仕事に取り組んでおく必要があるな。」そんな危機感を持ち、地に足をつけて1歩ずつ前へ進もうとする優秀な薬剤師さん(もしくは薬剤師の卵)だけが、この先へ進んでもらえればと思います。
そもそも、今後のキャリア形成を考えていく上において、心に留めておいて欲しい事は、薬剤師として国から認定される、つまり「薬剤師資格を手に入れる」ということと、「社会的に認められる、必要とされる」ということとは意味が違う、別次元の話だということです。
つまり、社会に必要とされる薬剤師さんになるためには、免許を保有している”だけ”ではダメなのです。
今はなかなか想像できないかもしれませんが、「使えない薬剤師は行き場がない。」そんな時代がもうすぐそこに迫っているということを、今一度再認識しておいてください。(詳しくは、こちらの記事参照。)
そんな大きな時代の変化に飲み込まれていくことになる”これから”の薬剤師さんたちの中には、「就職先が決まったと同時に”転職”活動を始める学生さん」や「入社間もない時期に転職活動を開始する人」もいるぐらいです。
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こうした状況は、「国家資格を有していれば一生安泰。」といった感覚の一昔前までであれば考えられなかったことです。
薬剤師資格を手に入れたからといって「もうキャリアについては何も考えなくても良い。」と思ってしまうのではなく、将来「”使えない”薬剤師」扱いをされてしまうようなことにならず、社会全体の大きな変化を敏感に感じながら、薬剤師の中でも一握りの「優秀な薬剤師」への仲間入りを果たすためにも、今から、中長期的なキャリアプランについて考えておくことにしましょう。
薬剤師のキャリアプランについて
前章では、今後の医薬業界においては、薬剤師になったからといってキャリアプランに無条件に安心感を抱けるような環境ではなくなってくるというお話をしました。
「そんなことは考えてみたこともなかった。」という人もいるかもしれませんが、薬剤師資格を無事に手にすることができたあなたは、現時点において、薬剤師としてのこれからの自分の人生がどのようなものになっていくと想像していますか?
ここから先へ読み進める前に、一度目を閉じ、実際に自分の30歳の時の姿、40歳、50歳の時の姿をリアルに想像してみてください。
(実際に想像中)
(実際に想像中)
(実際に想像中)
考えずに読み進めるのではなく、本当にちゃんと考えてみましたか?1分もかかりません。実際にイメージしてみてください。
どうでしょうか。
自分が30歳になった時、どんな場所に勤めていて、どのような仕事に携わり、どんな家族や友達とどのような日常を送っていることを想像しましたか。
「こんな〇〇歳になれていたら良いな。」とポジティブなイメージがいっぱい浮かんだという人、「現実的にはこんな感じだろうなあ。」と少しネガティブに捉えつつ、なんとなくしかイメージができなかったという人、あなたはどっちでしょう。
”キャリア”というのは、後から振り返ると次の3パターンのいずれかしかありません。
- 実現を強く願っていた理想のキャリア
- 想像していなかったキャリア(良い方向)
- 想像していなかったキャリア(悪い方向)
歳を重ね、仕事にも慣れて、人によっては結婚などのプライベートでのイベントも経て、30歳を超え、40歳を超えた頃に、ふと自分の人生を振り返った時、結果として自分の人生が辿って来た軌跡というのは、この3つのどれかに必ず当てはまることになるわけです。
1つ1つ見ていきましょう。
実現を強く願っていた理想のキャリア
「地域に根差した薬局で、患者さんに寄り添いながら薬剤師としての信頼を獲得していく。」「大きな病院のイチ薬剤師として、地域医療に貢献したい。」「研究開発の分野で画期的な創薬に携わりたい。」そんな風に明確なイメージを持って仕事を始め、多少のギャップはありつつも、概ね満足のいく仕事内容(やりがいや労働条件など総合的に)であるため、特に不満はなく、理想に近いキャリアを送れているなと感じられている人です。
皆がこれに該当する様な生き方ができていれば、言うことはないのですが、現実にはなかなかそうはいかないという場合も多いかと思います。
想像していなかったキャリア(良い方向)
これは、何かのきっかけによって、実際に薬剤師になる前には想像もつかなかったような仕事に就き、想像よりも満足度の高い形でキャリア形成をしていくことができたというパターンです。
薬剤師として働き始め、様々なキャリアについて想いを巡らせる中で、やりたい仕事・職種を見つけ、そこに向かって努力し行動を起こすことでそれを手に入れた人。
ふとしたきっかけから他の職種に移ることになり、そこで就いた仕事がたまたま”天職”と思えるような非常に満足度の高いものだったという人。
少数派ではあるかもしれませんが、どちらも実際に存在するキャリア形成のパターンです。
仕事の内容、ひいては社会の仕組みなどというものは、実際に社会に出て多くのことを経験し、様々な情報に触れていくことでしか把握することはできません。
その中で、きっかけはいろいろと考えられるにせよ、結果的に自分の仕事に対する満足度が高い状態をつくり出せているのであれば、これは非常に幸運なパターンです。
もちろん努力を重ねて勝ち得たキャリアであれば、自分を誇りに思えるような形での満足度の高さといったものにつながるでしょうし、ひょんなきっかけからそうした満足度の高いキャリアを歩むことができたという人は運が良かったと言えるかもしれません。
いずれにしても、様々なめぐり合わせによって、あなたが自分自身の真の才能を開花させたり、本当に天職だと思える仕事に進むことができていれば最高ですね。
想像していなかったキャリア(良くない方向)
後から跡から振り返ってみると、
「薬剤師になったからには、もっと条件の良い形で働けると思っていたけど、結局はただの”イチ従業員”に過ぎない形で、サラリー生活を送って来ただけ。」という程度のキャリアだったという人。
「自分ではもっとバラ色の人生を思い描いていたけれど、この歳(40歳とか50歳)になって振り返ってみると、もっとあんなことやこんなことに挑戦しておけばよかったかなとも思う。」と後悔が多く残るという人。
というように、薬剤師になりたての頃(今のあなたです。)に想像していたよりも”良くない”キャリアを歩んできたと感じることになるパターンです。
そしてこれは、”今までの時代”の薬剤師さんが抱くネガティブなイメージでもあります。
冒頭でお話したように、”これからの時代”というのは、こんな程度では済まない世界が広がっていく可能性が高いということを頭に入れておいてください。
つまり、これまでであれば後悔こそあれど、職にありつけないといった事態はほとんど考えられませんでしたが、今後は最悪の場合そういったことが起こってくるということです。
技術革新や法改正・人口動態などの社会構造の変化によって、劇的に変化する薬剤師の働く現場において、その大きな時代の流れに付いていくことができず、キャリアどころか薬剤師資格を取った優位性などほとんど感じられないといった人生を送ることになるというような人たちが出てきてもおかしくないのです。
薬剤師が理想のキャリアを手に入れるためにすべきこと
ここまでの話で、自分の将来について少しは”危機感”を持つことができたでしょうか。
これまで考えてもいなかったような世界も含めて、いろいろとイメージを拡げることができていたのなら幸いです。
ここまで、未来ある薬剤師さんたちを脅かすような形で、
「現状満足に浸って、易々と安心してしまってはいけない!」
と散々言ってきたわけですが、では、これからの時代、薬剤師として理想のキャリアを築いていくためには、どのような考え方で、どのように行動していけば良いのでしょうか。
ファーマンの考える大切なポイントは3つです。
- しっかりと時代の流れを読む
- 自己研鑽を怠らない
- 目の前の仕事に向上心を持って取り組む
しっかりと時代の流れを読む
くどいようですが、これからの医療現場、医薬業界というのは、技術革新や社会構造そのものの大きな変革の流れによって、少し前の時期がかなり遠い昔に感じられるほど、物凄いスピードで変革が訪れます。
薬局勤務であれば、システム化や省人化を中心としたその処方形態や門前医院との関係性、医薬品の流通形態から各種薬局運営に係る法制度の改正といった調剤業務の根幹部分、研究職であれば、薬剤師・薬業の専門家の領域を超越したITスキルの要求や研究スタイルの変化など、各職種において、今どのようなことが議論されていて、将来どの段階でそういった技術や方針が現場レベルで実現されてくるのかということを、常に意識しながら情報をキャッチしていく姿勢が非常に大切になってきます。
自己研鑽を怠らない
想像してみてください。
薬局に勤務するあなたは、ある日突然、経営者から「〇か月後に〇〇というシステムを導入しますので、今の現場は薬剤師の人数を削ることにします。今いる薬剤師のうち何名かに異動をお願いすることになります。」と言われた時、もしあなたがなんらかの理由でその現場に残りたいと思っても、そうした事態に対応できるだけの能力やスキルを持ち合わせていなければ、自分の希望は通らなくなってしまうのです。
社員であれば、いきなり首を切られるといったことはないかもしれませんが、それこそ会社側から「使えない薬剤師」的なレッテルを貼られてしまったりすれば、やはり望まない仕事をやらされてしまったり、今よりも労働条件が悪くなるといったことは十分に考えられることです。
したがって、前述の様に「しっかりと時代の流れを読んだ」上で、将来の薬剤師に求められるスキルを早い段階から磨いておくような努力は、常日頃から少しずつでも積み重ねておくようにしましょう。
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いきなりですが、これからの薬剤師に求められる”素養”とは、いったい何でしょう? 「素養」:平素の修養によって身につけた教養や技術 「薬剤・薬学に関する深く幅広い知見?」「医療技術の進歩に貢献するための ...
目の前の仕事に向上心を持って取り組む
これは、仕事に対する基本的な姿勢とも言うべき事ではありますが、最後の”命綱”にもなる要素でもあります。
もしもあなたが時代の変化についていけず、旧態依然とした薬剤師業務を踏襲した形での仕事を淡々とこなしてきただけという状態になってしまっていたとしても、目の前の仕事を本当に一生懸命に取り組んできた人には、そこに工夫や努力の跡が必ずありますので、万が一転職活動などをすることになったとしても、自分のアピールポイントとしてそういった部分の話をすることができ、それを武器にして転職活動を有利に進めることができるようになります。
そして、経営者はそういった人を放っておきません。
たとえ単純作業であったとしても、どうすればより効率よく業務を進められるかや、何か工夫できる点はないかといった向上心をもって仕事に取り組んでいるような人は、自社の社員としては非常に魅力的な人材なのです。
時代を読み、その時代に合ったスキルを身につけている状態が、当然最も必要とされる人材であることに間違いありませんが、成果を出そうと一生懸命知恵を絞り、前向きに仕事に取り組める人というのは、それと同等、時にそれ以上に評価が高くなる存在でもあるのです。
社会情勢や時代の変化に敏感になって、先読みをするといったことがなかなか難しいと感じる人は、まず目の前の仕事に一生懸命取り組んでみるということをおすすめします。
あなたのがんばりを、見る人は、必ず見ています。
あなたの努力は絶対に無駄にはなりません。安心してください。
まとめ
さて、今回は社会経験が浅い薬剤師さんたち向けに、今後のキャリアを形成していく上でどのような視点を持って仕事に取り組んで行けば良いのかといったことを中心にお話してきましたが、いかかでしたでしょうか。
「令和」という新たな時代を迎え、医薬業界に限らず、様々な業界・業種において様々な変革が起きてきます。
特に医薬業界においては、高齢化に端を発する医療費の削減という課題は避けて通ることができないものであり、医療技術の目覚ましい進歩も相まって、その課題を解決するための施策は根本的な医業・薬業の在り方すらも変えてしまう様な変化をもたらすことになるでしょう。
何年後になるかは分かりませんが、ファーマンの見通しが現実のものとなり、それでも現場の薬剤師さんたちが自分の理想のキャリアを生きていけるためのきっかけとしてこの記事が少しでもお役に立てたのなら、とてもうれしく思います。
この記事を読んでくださったあなたが充実した薬剤師ライフを送れることを願って。
それでは。