コラム

【コラム】欧米で増加する「成功報酬型の医薬品」日本での普及に向けた課題

「成功報酬型」。そう聞いて頭に思い浮かぶのは、転職が成功した時にだけエージェントに支払う「”成功報酬型”の手数料」や、金融商品の運用委託などに伴う「”成功報酬型”の手数料」などですが、今回は”成功報酬型”の「医薬品」のお話です。

いま欧米では、薬が実際に効いた時にだけ代金の支払い義務が発生するという「成功報酬型」の支払い形式を採用した医薬品が増えているといいます。

「成功報酬型の薬」とは

欧州や米国で「アウトカム・ベース」、「バリュー・ベース」などと呼ばれる薬価制度で、医療への経済的な評価を薬の評価に反映させる仕組みのこと。対象の薬が患者の疾患に効果があれば、製薬会社が提案する薬剤費を全額支払うが、効果がなければ支払い不要となるか、一定額の減額措置がとられる。米国においては、製薬会社と保険会社がこうした契約を結ぶことで、医療現場での成功報酬型医薬品の採用が増えてきている。英国においても積極的に活用されている。一方、製薬会社が薬価を決定する欧米と違い、政府が薬価を決定する日本においてはこの成功報酬型の医薬品の制度がなじみにくい面もある。

薬価が上昇する中で保険料の支払いを抑制したい行政側や保険会社と、自社の医薬品の普及を図りたい製薬会社の利害が一致しているため、こうした成功報酬型の医薬品の普及が進んでいるそうです。

どういうことでしょう。少し解り難いですね。

つまり、こういうことです。

そもそも薬というは、当然ですが「作る側」と「使う側」に分かれます。

そしてこの「作る側」(製薬会社)というのは、リスクを取った先行投資によって研究開発を進め、後の上市によって利益を得ることでそれまでの投資を回収しようとします。一方の「使う側」はと言えば、本来であれば、医師から処方された医薬品や各症状に適した薬を医師が使用した際に、その都度代金を支払うという形が一般的です。

これらを少し違った角度、つまり”利害関係”の面から整理すると、薬を「使う側」である「患者サイド」(ひいては医薬品の代金を支払う保険会社(欧米の例)や保険制度を運営する行政側。)というのは、医薬品の価格高騰が続く中、人口動態や高度医療の進歩などにより膨張し続ける医療費をできる限り抑制していきたいという思いがあります。

そして、薬を「作る側」である「製薬会社サイド」からすると、使用する側に「薬の効果があった時だけ代金を支払えば良い。」という安心感が醸成されることで、高額な医薬品でも利用してみようというインセンティブが働きやすくなり、結果的に幅広い薬の使用、普及を図ることができるというわけです。

このように、薬を提供する側と使用する側、二者それぞれの思惑が一致するという背景から、この成功報酬型の仕組みが拡がりを見せているということなのです。

米国の例で具体的に見てみると、米国では薬代を負担するのは主に保険会社です。

そして、この保険会社が製薬会社との間で、使用する薬に効き目があった場合にのみ代金を支払うという契約を交わします。

そうすることで、保険会社と製薬会社が、新薬の販売に伴うリスクを分け合うことができるわけです。

保険会社は成功報酬型を導入することで、支払額が一方的に増えてしまうリスクを抑えられるため、より多くの新薬を支払いの対象とする保険商品を用意することができます。すると、保険契約をさらに増やしていくことができ、結果として薬の使用頻度も高まってくることで、製薬会社に利益として還元されるという流れをつくることができるのです。

日本でも、製薬会社からは「この成功報酬型の普及を進めて欲しい。」との声が強い中、厚生労働省は「検討しないでもない。」と、「急ぎの案件」との認識は薄く、体制整備に向けた動きにはあまり前のめりではないようです。

そんな腰の重い厚労省の動きの一方で、”デファクトスタンダード化”する可能性も否定できません。

今後医薬品の世界では、はっきりとした効果が実証されないまま、期待値によって高額な価格設定がなされた医薬品が相次いで出て来るからです。

そういった薬には、まさにこの成功報酬型という形式を採用するのが最も理想的だと言えるため、制度整備の必要性の声が高まってくる可能性も高えられ、デファクトスタンダード化が予想されます。

遺伝子治療薬や再生医療などの最先端科学技術による高度医療の分野においては、その製品に早期承認制度が設けられていて、こうした製品に成功報酬型の仕組みを導入されることで、難病患者などが薬を使用しやすくなるといったメリットも見込まれます。

「iPS細胞」のように、難病患者が希望を見出せるような医療技術が現れる中、制度設計の遅れなどによって、そういった画期的な治療薬や治療法を使用できないといった最悪の事態に陥ってしまうことの無いよう、行政サイドには100%患者の気持ちに立って、できる限りの取り組みをしていって欲しいと心から願いたいところです。

【2019/4/29 追記】

武田薬品工業が、成功報酬型の制度に基づく販売方式を新薬で採用することがわかりました。まずは欧州での高額なバイオ医薬品で導入を検討するということです。

国内製薬最大手である武田の今回の動きにより、国内における成功報酬型の医薬品導入へ向けた議論が活発化することが期待されます。

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