「私の会社はこんな会社です。」
あなたは、そんな風に”定性的・定量的”両側面から自分の会社(研究施設・医療機関等を含む。以下同じ。)について話をすることができますか?
定性的:数字で表せないような物事、抽象的な事柄
定量的:数字で客観的に示すことのできる物事
”定性的”な部分、つまり、社内の雰囲気や普段の様子、現場における実際の業務内容から人事の”クセ”といったものまで、数字に表れない”肌感覚”の様なものについては、常日頃感じている事ですのでいくらでも言葉にできるかもしれません。
その一方で、”定量的”な側面についてはどうでしょう。
銀行や証券会社、あるいはコンサル業界など、企業を分析する、調べるということ自体を生業(なりわい)としているような人たちを除けば、「定量的に企業の実態を知る”術(すべ)”」を知っている人というのは、案外少ないのではないでしょうか。
では、就職・転職に際して「会社を知る必要がある」と考えた場合、どちらの情報が大切になってくるでしょう。
就職・転職活動において、気になる会社を調べたいと思った時、あなたはどうしていますか?
「とりあえずネットで社名を検索してみるぐらい。」
「気になることがあれば面接等に行ってみて聞けば良いので、求人情報以外特には調べない。」
そんな人がほとんどでしょう。
そこで今回は、特定の企業の実態について知りたい時にはどうすれば良いのか、どのようにしてその企業を見極めいくべきかということについてお話していきたいと思います。
あなたも就職や転職活動の際に、「気になる会社をもう少し知りたい。」と思った時には今回ご紹介する方法を是非活用してみてもらえればと思います。
それではさっそく参りましょう!
‐ Contents (目次) ‐
自社を”自己紹介”してみる
冒頭で、今の自分の会社について説明できるかどうかについて尋ねましたが、あなたはスラスラと話すことができましたか?
もちろん、説明する相手によって話すべき内容も異なってきますし、「まず何から言えば良いのかもよく分からない。」そう感じた人もいたかもしれません。
改めて聞かれると、自信を持ってはっきりと自分の会社について説明できないということに気が付いたという人もいたかと思います。普段から、
「自分の給料は増えないけど、本当は儲かってるんじゃないの?」
「ウチの平均年収ってどのくらいなの?」
「同業他社と比べてウチの会社って、ぶっちゃけどうなの?」
などなど、「給料が上がる」とか、「ボーナスが増えた減った」、「人事がどうなる」というような、自分の”懐事情”や”隣の青い芝生”のことは気になれど、自分の会社の現状について真剣に考えてみようと思ったことなどないという人がほとんどでしょう。
ここで1つ、あなたの会社を紹介する場合の”例”として、以下にその話し方を示してみましょう。もちろん、これが唯一の正解ということではありませんが、一度目を通してみてください。
私の会社は〇〇(社名、施設名等正式名称)と言って、〇〇県の○○市という場所にあり、主に○○(事業内容、診療科目、研究内容等)を行っている会社です。従業員はおおよそ○○人程で、昨年の売り上げ規模が〇〇億円程です。
最低限これだけのことが言えれば、”社会人”としては一応合格点ではないかと思います。簡単ですね。
日頃同僚や家族と話す時のように、上司や会社の体勢等に関する批判や愚痴などを話しているようではいけませんね。客観的事実のみを簡潔に紹介すればOKです。
その会社を知らない人に、まずはおおまかに「こんな会社なんだな。」とイメージを持ってもらうためには、「どこにあるのか」「主要な事業(診療科等含む)は何なのか」「規模はどの程度なのか」といったことが伝えられれば良いわけです。
社名や所在地などは別として、この”規模”をイメージできるような内容、これがいわゆる”定量的な面”ということになります。
では次に、その会社の”定性的な部分”についてはどうでしょうか。
就職・転職を目指す人たちにとっては、実はこの定性的な部分の方が知りたいと感じている人もいるかもしれません。具体的には、「職場の雰囲気や人間関係」「勤務形態などの働きやすさ」、「福利厚生」などです。
ここが非常に重要なポイントです。
つまり、「あなたの会社はどんな会社ですか。」と聞かれた時に答える内容(主に定量面)と、就職・転職に際して知りたい情報(定性面を重視する人もいる)というのは、本質的に異なっていることがあるということです。
あなたは今、どちらの面を知りたいと考えていますか?
まずはここを分けて考えるという所から出発していきましょう。
本来、”企業分析”と言う場合には、前者の「定量的な評価」を指しています。「企業分析をしてきました。」と言って、その会社の社内の風通しのの良さや人間模様、人事の状況等について語ることはありません。
一方で、企業分析という目的のために得られる”定量的”な情報が就職・転職に役立たないというわけではありません。
その会社を取り巻く「事業環境」や「財務状況」を知ることで、会社の実態、すなわち「安定性」や「成長性」といったものを見極め、本当に入社するかどうか判断するということはとても大切な事です。
したがって、就職・転職活動において「会社を調べる」という時には、
- 会社の評価には”定量評価”と”定性評価”がある
- ”定性面”と”定量面”では、その調べ方は全く異なる
- 自分がどちらを重点的に調べたいのか初めに考えてみる
というようなポイントを意識して進めていくようにしましょう。
しっかりと対象の会社を見極めるためには、定性的・定量的、どちらの面も大切であるということに加え、情報収集が非効率になってしまったり、得られた情報を見誤ってしまうといったことが無いように、これらのポイントを是非最初に頭に入れておくようにしてください。
それでは、具体的にはどのようにして調べていけば良いのか、ということについて見ていくことにしましょう。
「上場企業」と「未上場企業」
ここまで、会社=企業を調べる上では、「定量面」と「定性面」を分けて考える必要があるというお話をしてきました。
そしていよいよ個別の企業を分析しようと思った時、さらにその”入口”として、まずはじめに分類しておくべき事項というものが存在するのですが、あなたはピンときましたか?
そうです。(タイトルでネタバレしてますが、)その企業が「上場企業」なのか、「未上場企業」なのかということです。
世の中の会社=企業というのは、「株式を上場しているか」「していないか」のどちらかしかありません。
そしてこの2つでは、開示されている、つまり公表されている情報量が圧倒的に違いますので、調べる側(あなた)にとってはある意味でその”労力(大変さ)”に大きな差が出て来ることになります。
”株式”や”上場”、”開示”などと聞くと、ややこしく思えてしまう人もいるかもしれませんが、これも身構える必要はまったくありません。噛み砕いて解説していきます。
「上場企業」の”開示義務”とは
「上場企業の開示義務」と言われても、「、、???」という人も多いかと思いますので、そこから始めていくことにしましょう。
まず、「上場企業」という言葉自体は聞かれたことがあるかとは思いますが、端的に言うと「会社の株式を公開している会社」ということになります。
では、この”公開している”とは、どういう状態のことを言うのかと言いますと、「誰でもその会社の株式を購入することができる状態」と言い換えることができます。
つまり、上場していない会社(未上場企業)の場合であれば、その会社の株式は誰しもが簡単には買えないように制限がされているのですが、上場企業であれば、その会社の株式は「市場」、つまり証券会社を通して誰でも簡単に購入することができるわけです。
そして、これらの上場企業には、その会社の株式を購入しようと考えている人が、その株式が購入する価値があるのかどうかということを判断するための材料を提供することを目的として、会社の状況を定期的に公表するよう義務付けられていて、この制度のことを、「上場会社の開示義務」と呼ぶのです。
ここでの「ポイント」!
- 「上場企業」とは、自社の株式を誰でも買える(株式を公開している)状態にしている会社のこと
- 「上場企業」は、自社の状況を定期的に資料にまとめて発表することが義務付けられていて(開示義務)、その資料は誰でも見ることができる
じゃあ、未上場企業は上場企業の様に会社の状況を定期的に発表しなくても良いのかというと、そんなことはありません。
上場企業の様に”ものすごく詳細”な情報までまとめて公表するという義務は課されていませんが(企業規模が非常に大きい場合には、上場企業と同程度の情報開示義務を負う場合もあります。)、どんなに小さな会社でも「決算公告」というものを行わなければならないということが決められています。(会社法第440条)
公告:官報その他の方法により、特定の利害関係者に限らず広く会社の情報を公開すること
つまり、未上場企業であっても、その決算の状況(事業を行った結果の数字)を公に発表しなければならないとされているわけです。(その方法については、新聞での広告、インターネットでの掲示等でも可能)
ただ、未上場の中小・零細規模の株式会社のうち、この「決算公告」を行っているのは、全体の数%にとどまっており、実態としてはほとんどの会社が決算公告を行っていません。
決算公告を怠った場合の罰則規定についても、100万円以下の過料処分と定められてはいるものの(会社法第976条)、これを実際に課せられた企業はほとんど存在しないような状況です。
では、なぜ「決算公告を行わなくても良い様な状況になっているのか」、「誰も指摘しないのか」というような疑問が出て来るかと思いますが、この部分を突き詰めていくと非常にややこしい話になってきます。
したがって、ここでは「未上場企業も本来は決算情報を開示しなければいけないが、実際には実務上の理由等からほとんど行われていない。」とだけ覚えておけば十分です。
この点について詳しく知りたいという方は、「非上場・中小企業決算公告について」←こちらを参照してください。
では未上場企業についてのポイントもまとめておきましょう。
ここでの「ポイント」!
- 「未上場企業」とは、誰もが自社の株式を買える状態になっていない(株式が公開されていない)会社のこと
- 「未上場企業」も決算情報を公表しなければならない決まりになっているが、実際にはほとんど行われていない
「上場企業」と「未上場企業」について、イメージが出来てきたでしょうか。
要は、「上場企業は誰でも見られる資料がたくさんあって、未上場企業はそれがほとんどない。」と捉えておけば大丈夫です。
それではいよいよここからは、上場企業と未上場企業のそれぞれについて、実際にどのようにして情報収集を行っていけば良いのか、企業分析をすれば良いのかというお話に移っていきたいと思います。
こうした類のお話が苦手な人は、この時点で少し疲れてきてしまっているかもしれませんが、一度大きーく背伸びをして首の後ろ辺りをほぐし、次の章へ進んでもらえればと思います。(ここからの内容自体は、そこまで気合いを入れなければいけないほどややこしい内容にはなっていませんので、ご安心を。)
本題に入る前にここまでお話してきた「会社を調べる前の”前提条件”」について、そのポイントを改めてまとめておきたいと思います。
- 調べたい内容が”定量面”なのか、”定性面”なのか自分の中ではっきりしておく
- 会社には「上場企業」と「未上場企業」があるので、まずは自分が調べたい会社がどちらなのかを知る(知る方法は、こちらに社名を入力。合致する企業があればその会社は上場企業。)
- 上場企業には開示資料が豊富にあるのでそれらをチェックする(後述)
- 未上場企業はほとんど情報が開示されていないのが実態なので、自分で色々と調べてみる必要がある(その方法については後述)
定量評価:会社の”経営実態”を知る
まずは「定量評価」についてです。
ここでは、その会社の業績がどうなのか、財務内容がどうなのかといったことを調べる方法をお教えします。
この定量評価から判断すべきことは、その会社の安定性、成長性です。
就職・転職活動において、自分が「入ろうかな。」と思う会社について、現状を知ることで、自分の持つ業界の先行き見通しなどとも照らし合わせながら、その会社の将来性について考えてみてもらえればと思います。
上場企業
前述の通り、上場企業には開示された資料というものが非常に豊富に用意されています。最近では、インターネットの普及により、自社のWebサイトを持つことも当たり前となり、そこにも様々な資料が用意されています。
実際にどんな資料からどんなことを読み取っていけば良いのか、見ていくことにしましょう。
会社四季報
就職・転職活動をしている人たちに最もおすすめの方法がこの「会社四季報」をチェックするというやり方です。
金融や企業分析の専門家でもない限り、詳細な財務情報等の資料を読み込んでみようという気にはなりにくいかと思いますし、興味がない人からすれば”ただの数字の羅列”で、ややこしそうな書面というぐらいにしか感じられないというのが正直なところではないかと思います。
そこで、この「会社四季報」の登場です。
従業員の数や平均年齢・平均年収、設立年月日に役員の氏名、今の事業環境から今後の見通しについて、もちろん財務情報や支店・営業拠点のある場所に至るまで、その会社を一通り把握するのに必要な情報を網羅的に掲載してくれています。
現に金融のプロたちの間でも、初見の企業について概略を知りたい際などはこの会社四季報を参照することが多いぐらいですので、安心して確認してもらえればと思います。
ただし、いつでも最新情報を得られるように”情報の鮮度”が重視されていて、この本は年に4回(3月、6月、9月、12月)、季節ごとに発行されていますので、あなたが調べようとしている今の直近のもの(もしくはもうすぐ最新のものが発売されるようであればそちらの新刊)を見る様にしましょう。
有価証券報告書
つづいて、「有価証券報告書」という書類になります。
これは、上場企業の内情を知る上においては、この上なく詳しく書かれている書類ですので、会社の隅々まで知りたいという場合には、是非ダウンロードしてしっかりと読み込んでみてもらえればと思います。
また、この有価証券報告書は、前章でもお話した”開示書類”の1つで、上場企業が提出を義務付けられているものですので、一度その見方のコツを掴んでしまえば他の会社も同じフォーマットで書かれていますので、その見方を応用することが可能になります。
では、実際にこの有価証券報告書を入手したら、どこを見れば良いのでしょうか。
ポイントは、大きく7つです。
1、企業の概況
これはその企業の「直近の決算」が書かれている部分になります。
銀行等の金融機関担当者やコンサルタントであれば、財務情報を詳しく分析するということも必要になってくるのですが、就職・転職活動においては、「売上高の推移」「利益の推移」「自己資本比率の状況」ぐらいについてざっと目を通しておけば大丈夫です。
「売上高」の項目では、その企業の事業が順調に拡大しているのかということを確認します。つまり、”成長性”の確認です。理想は常に前期(前の年の数字)よりも増えているという状況が継続しているという状態ですが、最悪でも一定規模をキープしていることが確認できれば、衰退しつつあるような会社ではないということは判断できます。
「利益の推移」については、「売上高」がその会社の成長性を見るものであったのに対して、収益性を計る指標ということになります。売上高に対してほぼ右肩上がりに利益も増え続けている状態が理想です。ただい、利益に関しては「一時的な要因」や「先行投資」が重なったことによってある程度波がある場合もありますし、成長著しい企業でもあえて利益を出すことを重視していないという場合もあります。
したがって、基本的には売上高で成長し続けているということを確認できれば大丈夫です。逆に言えば、売上高が下がり続けている場合は要注意ですので、その場合は他の情報等も照らし合わせて本当にこの会社は大丈夫なのかと疑問を持つということが大切です。
2、沿革
これは「その会社の歴史」を見るものです。
いついつ創業し、どんな過程を経て今の状態になっているのか、といったことが解ります。最近ではM&A(企業の合併・買収)なども非常に盛んに行われていますので、以前はどんな会社だったのかといった系譜を知るということもあります。
面接などに進む際に、その会社の歴史を前提としたような話題が出る場合も当然ありますので、ちんぷんかんぷんな事を言ってしまわないためにも、ある程度大きな出来事は頭に入れておいて損はないでしょう。
3、事業の内容
読んで字のごとく、ですね。その会社がどんな事業を営んでいるのかといった内容が書かれています。
一般的に知られている事業の他にも、あまり知られていない事業を行っていたり、自分が思っていたのとは違った商流(仕事の流れ)が存在していたりしますので、これも大枠を掴んでおくと良いでしょう。
4、従業員の状況
もしかするとここが一番気になるという人もいるかもしれませんが、ここではその会社で働く人たちの状況が書かれています。
「事業領域ごとの従事者の人数」や「従業員の総数」、「平均年齢」や「勤続年数」から「平均の年間給与」といったことまで書かれていますので、自分の思い描くイメージと合致しているかどうか確認してみると良いかと思います。
5、事業の状況
これは、3の「事業の内容」と同じように聞こえるかもしれませんが、この「事業の状況」というのは、足許(あしもと)の会社が重点的に取り組んでいること、事業環境において起こっている事柄などがまとめられています。
事業の内容に書かれたような事業を進めていく中で、どのような事が起こり、どのような形を目指してその会社を運営しているのかということを把握するのに適した章と言えるでしょう。
6、事業等のリスク
これも事業に関する内容になりますが、その名の通り、リスクに関する事項について書かれています。
自社の事業を進めていく上では、こんなリスクが考えらえますよ、というようなことを中心に書かれていますので、大きな法改正や財務上のリスクといったことが懸念される場合にはここでしっかりとその内容を確認しておくと良いでしょう。
7、経営者による分析
最後に「経営者による分析」ですが、これは決算数値を簡単に説明したものとなっている場合も多いですので、さらっと目を通しておき、後で解説する「決算説明資料」で経営者のその会社の今の状況の捉え方を知るということができればベストですね。
プラスα、おまけ
以上の様な項目を「有価証券報告書」では確認しておきたいところですが、おまけとして「こんなことも書いてあるよ。」という部分についてもお話しておきましょう。
それは、「役員の状況」と「報酬」についてです。
実際にその会社の選考プロセスに進む場合には、最終的には面接に役員が出て来るということもあるかと思います。そんな時に、「○○さんが○○事業部担当」といったようなことが自分の頭の中に入っていれば、ピンポイントで自分の行きたい部署にアピールが出来たり、気になることを直接聞いてみるということも可能になるかもしれませんので、その会社を受けてみようと思う人はこの役員の状況というのも頭に入れて置ければよいかもしれません。
そして報酬ですが、これは本当に興味本位ですね。上場企業の場合、役員のうち「1億円以上」の報酬を受け取っている場合には、その内容を開示する義務がありますので、興味があればそちらも覗いてみられればと思います。
以上、これらを抑えておくことができれば、定量的な情報については一通りその会社を”理解”できたと考えておいて良いかと思います。
この記事の最後に、「上場している薬局」についてもまとめていますので、気になる方はそちらも参考にしてみてもらえればと思います。
決算説明資料
続いて「決算説明資料」です。
これは作成している会社と作成していない会社がありますが、まずはその会社のWebサイトで確認してみてください。
この資料は、多くの上場企業で開催されている決算説明会という場において使用される資料で、対象となる決算期の経営状況をまとめたものになります。
直近の終わった期では、どんなことが起こっていて、どんな施策を打って、どのような結果になったのかといったことが解ります。
また、次の期以降の戦略についても話されることが多いですので、会社がどういったことに注力しているのか、それが自分が考えている方向性と比較してどうなのかといった視点で感がえてみると、その会社に入るべきかという判断の1つのヒントを見つけられるということもあるかもしれません。
ネット上での検索
これはあえて言うまでもなく、誰でも行うことかと思いますが、ネット上に転がっているあらゆる記事を読んでみるということです。
その会社のホームページは当たり前のことながら、過去にとられた代表者や役員、従業員のインタビュー記事などもあれば、その会社の雰囲気を知るのに役に立つかもしれません。
ただし、注意点が2つ。
まず、役員や従業員のインタビュー記事では、その会社の内情、つまり本人が会社に対して本当に思っていることが書かれているということは稀だと考えておいた方が無難でしょう。広く一般に見られているネット上の記事で、会社に対する不満点ばかりを話すというのは相当勇気がいることですし、自分んがそういう場に出くわしたと考えても、なかなかできることではありませんよね。
さらにインタビュー記事などがいつのものかということです。既述のように、その会社がそのインタビューが取られた後に大きなM&Aを経て、全く違う社風の会社のようになっていたり、そもそもその役員や従業員が会社を去っているといった場合もあります。
したがって、こうしたネット上の記事等に関してはあくまで参考程度にとどめ、自分が持つイメージを多少補完してくれる程度のものだと考えておけば良いでしょう。
これを言ってしまえば、身もふたもありませんが、結局はその会社の悪い部分も含めた本当の姿というのは、実際に就職して中で働いてみないことには分かりません。
そういう意味では、入社するまでに得られる情報というのは、基本的には疑ってかかるぐらいの方が健全かもしれません。その会社に関する様々な要素を疑って見てみて、それでもなおその会社に魅力を感じる部分があるのであれば、その時は自信を持って飛び込んでみても良いのかもしれませんね。
未上場企業
次に「未上場企業」の場合です。
長々と紹介できる程たくさんの資料を参照することができた上場企業とは打って変わって、未上場企業というのは非常に情報を得ていくのが難しいというのが正直なところです。
特に、地方の中小零細企業などにおいては、従業員数も非常に少なく、事業の拡大意欲などもあまりないと言った場合も多いですので、そもそも開示資料といった類のものを作成したり公表したりする必要性にも乏しいわけです。
ただ、そうは言っても参考にできそうな資料がある場合もありますので、一部そういった資料をご紹介しておきたいと思います。
帝国データバンク
まずはこちら、「帝国データバンク」の資料です。
中小企業を調べる必要がある金融機関等の人間がまずさらっと目を通すのがこちらの資料です。
この資料は、基本的には帝国データバンク側からのヒアリングに中小企業が答える形で作成されていますので、その回答の充実度いかんによっては会社ごとの情報量に差があるというのが少し残念なところではあるのですが、それでも情報が少ない中小零細企業の情報を得られるという意味においては非常に頼りになる存在です。
また、この資料は有料となるのがネックで、もしもあなたがこの会社は次の転職先として真剣に考えたい、勤め上げられる会社なのか確かめておきたいといった強い意志を持っているということであれば取り寄せてみても良いかもしれません。
また、そうした情報をアプリ上で取得することができるサービスも始まっていますので、気になる人は合わせてチェックしてみてください。
会社四季報『未上場会社版』
上場企業の所で一番初めに紹介した会社四季報の未上場企業版になります。
掲載されている企業はある程度絞られてはきますが、地方でもそこそこの規模あるといった場合や、大手企業との取引があるといった場合などは掲載されている場合もありますので、こちらもその会社の概略を知るという意味では一度覗いてみると良いかと思います。
官報
前述の通り、あらゆる株式会社はその決算情報を決算公告として公表することが義務付けられていますので、その制度に従って公告を行っている会社であれば、この官報等に情報が掲載されています。
未上場企業の決算情報に関心がある人は、こちらも覗いてみると良いでしょう。
業界紙や特集記事
次に「業界紙」や「特集記事」にも触れておきましょう。
医療、薬業に関しては様々な業界団体や専門媒体が存在しています。どれも大体業界で起こったニュースなどを取り上げているものばかりではありますが、たまに中小零細企業に触れた記事などもある場合がありますので、自分が探している会社の情報があるかどうか、各社のWebサイト等で検索して見られると良いでしょう。
また、各種経済系の雑誌等において、医療や薬業に関する特集が組まれることもあります。こうした記事にも、昼食零細企業の取り組みやその事業内容等について触れる記事がある場合もありますので、こちらも念のためチェックしておいても良いかもしれません。
地方紙
意外と穴場とも言える存在がこの地方紙です。
この類の媒体は、当然のことながら地方のその地域におけるニュースに特化した内容を中心に構成されていますので、非常に小さな会社で起きた出来事であったとしてもニュースとして取り上げられていたり、運よく自分が知りたい会社の役員や従業員のインタビュー記事などが見つかるかもしれません。
地域の図書館などでバックナンバーが見られたり、中身が検索できたりする場合もありますので、無料で幅広く情報を得たいという場合には一度足を運んでみても良いでしょう。
国立国会図書館
日本国内で発行されたすべての出版物(マイクロフィルム、CD、DVD、地図などを含む)は、国立国会図書館に納入するということが、国立国会図書館法によって出版社に義務付けられています。
したがって、あなたが行きたい会社の地域にフォーカスして、その会社の動向を取り上げた様な雑誌や記事などを検索する最終手段として、この国立国会図書館を利用するというのも一つの手段になり得ますね。
矢野経済研究所
最後に、正直言ってここまでする人は稀かと思いますが、非常に高額な料金を支払ってでも情報を得たいと考えている人向けに、一応ご紹介しておきます。
この矢野経済研究所とは、自社で独自に様々な業界について調査をしレポート等を出している会社になります。この会社が出しているレポートには、その業界を深く掘り下げたものなども豊富に用意されているという特徴があり、普段なかなか目にすることのできないデータや情報に触れることができるということで重宝することもあります。
ただし、マーケットレポートというタイトルからも解る通り、業界全体の動向などを中心にした記事がほとんどですので、個別企業についての情報は「あればラッキー」ぐらいの姿勢で閑雅ておいた方が良いということは先に言っておきます。
あくまで業界を捉える参考資料として、そしてその中に対象の企業があれば良いなといった感覚で利用されることをおすすめします。
定性評価:会社の”雰囲気”を知る
さて、ここまでは「定量評価」について様々な参考資料等をご紹介してきましたが、ここからは「定性評価」のお話に移っていきたいと思います。
まず、「定性評価」の”定義”を明確にしておきましょう。
会社を定性的に評価する、つまり数字に表せないような部分で見極めるというのは、どういった部分を見ることになるのでしょうか。
- 職場の雰囲気
- 実際の仕事内容
- 勤務形態(時間、場所、異動等)
- 福利厚生
おそらく、こういった項目が中心になってくるでしょう。
結論から言いましょう。
特定の会社について、その職場環境を定性的な面から的確に捉え、実際に自分が勤務した時の姿が完璧にイメージできるような情報をまとめたようなものというのは、この世に存在しません。
、、と言うより、そんなものを作ることを不可能です。
どこもそれをやっていないなどという問題なのではなく、定性的で変化の起こり得るものを正確に伝えるのは現実的に不可能なのです。
「それを期待してここまで読んできたのに。がっかり。」
そう思われた方、すみません。
ただ、残念ながら、どこを探してもそうした定性情報を正確に得ることはできないということ自体は間違いありません。そのためこの記事では、最後にどういった方法でそんな職場の情報を手に入れれば良いのかお話していきますので、もう少しお付き合いいただければと思います。
形式的な勤務形態や福利厚生の内容等については、求人票や労働条件通知書といった書面に記載されていている場合がほとんどだと思います。
ではなぜそれらが”的確”には示せないのかと言えば、実態がそのままの通りだとは限らないからです。
職場の雰囲気というものは、1つの職場においても、部署やその時その時の取り巻く人たちによって変わってきますし、その部署や周りの人たちといった環境自体も人の異動や退職等で変化するものです。そもそも人の相性や、心地よいと感じる職場環境なんて人によって千差万別です。
もし仮に、中小零細企業の従業員全員にインタビューを行って、各社の社員たちの意見としてまとめることができたとしても、それを参考にする側にとっては、少なくとも2つの問題があります。
1つは、全ての人が本心で語ってくれるとは限らないということ。さらに言えば、それらの声というのはそれを話している人たちの”主観”であって、その内容をもしあなたが「良さそう。」と感じたところで、実際の職場ではイメージが違っているということも十分に考えられるわけです。
逆に言えば、これが一番怖いことです。中の人の声を良いイメージで捉え過ぎていしまっていたことで、入社後に大きなギャップを感じてしまい、また転職を考え始めるという悪循環に陥ってしまうのです。
そして2つ目は、そういった話をしてくれていた人たちがずっと職場の同僚としてその会社にいるとも限らないということです。”いち従業員”の立場では、いつ異動・退職があるとも分からないというのが現実であることは既述の通りです。
では、会社の定性的な面を正確に把握する方法はないのでしょうか。
自分の感覚として間違いのない選択をするためには、定性的な情報をどのようにして得ていけば良いのでしょうか。それには、
自分の目と耳を総動員するしかありません。
当サイトでは、まずは自分の理想を明確にしないことには、いつまでたっても迷いの中で間違った選択ばかりを繰り返してしまう可能性があると再三お話しているのですが、
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【薬剤師のための失敗しない転職活動】転職理由を突き詰めよ!はじめが肝心!「始め方」から「転職サイトの使い方」まで
当サイトでは、薬剤師さんが転職を検討する際に知っておくべき様々な情報をご紹介するとともに、特に”転職初心者さん”に向けては、その「進め方」や「考え方」といった”基礎的”な部分についても色々とご紹介をし ...
それを明らかにできれば、あとはその感覚、自分の優先順位に従って会社を見極めていくために、自分の目と耳で確認していくより他ありません。具体的には、
気になる会社のインターンに参加する
リクルーティングや人事担当者にアポイントを取って話を聞きに行く
社員を紹介してもらって話を聞きに行く
面接等の場において気になることを質問する
職場見学に行って社員同士の空気感や雰囲気を肌で感じてみる
こうした方法を総動員して、地道に確かめながら自分のフィーリングに合うかどうかということを見極めていくしかないのです。
利害関係のない形で、つまり友人や知り合いなどの”つて”など何かの縁でその会社の中の人を知っている、もしくyは紹介してもらうことができるというものがあれば最も理想的ですね。
でも、そういった人脈を持ち合わせない会社の情報が欲しいという人がほとんどでしょうから、その方法についてお話していくことにしましょう。
ただし、中小零細企業において、その会社のカラー、職場全体の雰囲気を推し量るものさしを1つ挙げるとすれば、それは社長のキャラクターです。
おそらく昼食零細企業における採用プロセスにおいては、最終的には社長が面接に出て来るという場合も多いかと思いまうすので、そこで自分が確認しておきたいことをしっかりと聞き出せるように準備をしておきましょう。
これは高確率で当たりますし、社長の考え方やキャラクターといったものが自分の考え方や求める理想の職場増に近ければ、もし現場がその状況から乖離(かいり)してしまっていたとしても、社長の判断で事後的に修正が可能になります。
したがって、なかなか正確な情報を得ることは難しい”定性面”ではありますが、最終的な拠り所は、社長の考え方と考えておくと良いでしょう。
- まずは自分がどういった環境を理想の職場とするのか自分で正確に把握する
- それを踏まえて会社側とのコミュニケーションの中で確かめておくべき項目を明確にしておく
- 最後は社長自身の考え方や目指す方向性を聞くことで判断する
このような流れで確認していくというのが、現実的には最も間違いを少なくできる方法ではないかと思っています。
”上場している”薬局運営会社
最後に、世の薬剤師さんの半数以上が在籍し、代表的な職場とも言うべき業種である「調剤薬局」について、上場している会社とはどんな会社なのかということをまとめて終わりにしたいと思います。
もしかすると、この中にあなたの勤務先企業があるかもしれませんし、地域に根差した未上場の薬局チェーンに勤めているという人も多いことでしょう。
時間がある時にでも、これらの会社についてここまで紹介してきた簡単な項目をチェックすることで、今の自分の会社の「ん!?なんかおかしくない?」という部分や、「他の会社とここが違う!」といった部分が見えてくるかもしれません。是非活用してみてください。(昨今では、調剤部門を併設するドラッグストアも非常に多くなっていますので、ここでは大手ドラッグストアも含みます。)
- ウエルシア薬局
- キリン堂
- クオール薬局
- クスリのアオキ
- GENKY
- ココカラファイン
- サツドラHD
- サンドラッグファーマシーズ
- シップヘルスケア
- スギHD
- ツルハHD
- 東邦HD
- 日本調剤
- ファーマライズHD
- ファルコHD
- マツモトキヨシHD
- メディカル一光
- メディカルシステムネットワーク
まとめ
お疲れさまでした。
「企業分析」と言う言葉だけを聞くと、堅苦しく聞こえてしまいますが、就職・転職活動における企業分析というのは、要は自分との相性を確かめる作業ともいうべきものです。
数字で表される部分については客観的な評価が可能ですが、そうでない部分というのは、本当にその会社に入ってみないことには見えてこないものというのも多いものです。
今回ご紹介した資料や企業の本当の姿を確かめるための方法を駆使して、あなたも必ず理想の職場をゲットできることを祈っています。
それでは。
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