転職回数が2回、3回、場合によっては4回目、5回目と重なってくるにつれ、心配になるのが、
「転職回数が多いと、やっぱり会社側からは印象が悪いのかな。」
「何回も転職を繰り返していると、どんどん転職に不利になっていくもの?」
そういった部分ではないかと思います。
様々な事情によって、やむを得ず転職を重ねて来た場合であったとしても、”印象が悪くなってしまうのではないか”という不安を払しょくすることはなかなかできませんよね。
そこで今回は、この「転職回数」について、採用者側からみた率直な感じ方をご紹介するとともに、「他の薬剤師さんたちの状況は?」といった気になる部分について、さらには転職回数が2回以上のあなたが次の転職活動でどのように振舞えば、目標とする転職先への転職を成功させることができるのかといった「対応策」についてもお話していきたいと思います。
転職を目指すにあたり、「今までの転職回数の多さが心配。」という方は是非参考にしてみていただけたらと思います。
それではさっそくいってみましょう。
‐ Contents (目次) ‐
薬剤師の転職回数
まずは薬剤師さんたちの転職状況についてです。
世の薬剤師さんたちは、一体どのぐらい転職の経験があるものなのでしょうか。
データ
薬剤師さんの転職回数に関する統計、データに関しては様々なものがありますが、それらを集約すると、転職経験のある薬剤師さんのうち、1回~2回という人が全体の約60%前後、そして、3回の転職経験があるという人が約20%程度となっていて、転職回数3回までの人たちだけで約80%前後の中に収まってしまうぐらい、ほとんどの薬剤師さんが3回以内の転職回数となっています。
つまり、世の中の薬剤師さんたちの転職回数の状況としては、データ上は、
- 1回~2回という人がほとんど
- 3回超となると少数派
と思っておけばおおよそ間違いないとされています。
ただしその一方で、私自身が薬局経営者として多くの面接を行っている中で感じている感覚とは少し違っている気がするというのも事実です。
そこで続いては、その辺りの感覚についても少しお話をしていきたいと思います。
採用活動を行う中での”実感”
ファーマンが調剤薬局経営者として接する求職者の方々に関しては、直感的には上記のデータよりも転職回数は”多い”のではないかと感じています。
つまり、多くの薬剤師さんたちの履歴書を拝見し、それまでの職務履歴などについても話を伺ってきましたが、調剤薬局での勤務を目指す薬剤師さんという意味においては、3回以上、4回、5回という転職回数も全く珍しいものではない、というのが率直な感想なのです。
もちろん、個々人の様々な事情等により転職回数はまちまちですので一概には言えません。
薬学部卒業後間もないような若い薬剤師さんであれば、それほど転職回数が多いということは滅多にありませんし、逆に年齢を重ねていて、しかも製薬会社MRから病院薬剤師、そして調剤薬局での勤務という具合にキャリアチェンジを重ねて来たような人であれば、やはり転職回数も自然と多くはなってきます。
調剤薬局への転職を検討したことのある薬剤師さんであれば解るのではないかとは思いますが、今現在、薬局運営のための人材難で困っているという企業が多い中で、転職市場が転職活動を行う薬剤師さん側に有利な状況にあるという背景も、何回も転職を重ねている薬剤師さんが多いという状況に繋がっているのではないかと推察されます。
つまり、転職市場が薬剤師さんたちに有利な状況、すなわち”売り手市場”にあるということは、仮に薬剤師さんたちが転職後の職場が気に入らなかったとした場合、またすぐに次を探せば良さそうな条件の転職先がいくつも見つかり、実際に転職を繰り返すということが可能となる環境が整ってしまっているということです。
そして、その結果として”短期間で”、また”気軽に”転職する人が増え、転職回数がどんどんと重なっていくという状態になってしまっているのです。
一部の研究職や大きな病院の病院薬剤師など、もともと採用人数がごく少人数に限られた”狭き門”をくぐり抜けた薬剤師さんたちというのは、よっぽどの理由がない限り転職や退職を選びません。自分がやりたかった仕事や勤めたかった病院に入れたことで、余程の不満が無い限りはその職務に対する満足度が高いと考えられるからです。
そのような「現在の職務に対する満足度が高い薬剤師さんたち」が転職市場に出て来ないことも、転職市場で転職を繰り返している薬剤師さんたちが多いと感じさせる要因となっている部分もあるのかもしれません。
いずれにしても、統計上における「転職経験がある薬剤師でも、その多くが【2~3回程度】まで」といったデータよりは、調剤薬局に転職を目指す薬剤師さんたちの転職回数は多いと感じるというのが現場での感触としては言える所かと思います。
では、そんな転職回数の多い薬剤師さんたちというのは、転職活動の中において、採用する側から見てどのように映っているのでしょうか。
実はそれほど重視されていない転職回数
ここからは、転職回数が2回以上ある薬剤師さんたちが最も気になる所である、実際の書類選考や面接といった「選考過程」において、この「転職回数」というものがどれほど考慮されているものなのか、という点についてお話していきたいと思います。
結論から言ってしまえば、率直に言って、”転職回数”が問題となることはほとんどありません。
薬剤師を採用する企業、病院などの面接官が、”転職回数の多さ”だけを見て、不採用を決定するということはほぼないと考えておいて大丈夫です。
ただし、この”ほぼ”という所もポイントで、一定の条件を伴うものに関しては、採用・不採用の判断に影響を及ぼす場合も出て来ます。
では、その”条件”とは一体どういったもののことを言うのでしょうか。
「回数」の基準
まず、転職回数の”基準”についてです。
つまり、「何回までは大丈夫で、何回以上になれば否定的な見方をされてしまうのか」といった基準となる回数についてですが、ここに関しては明確なものがあるというわけではありません。
「2回までは良いけど、3回や4回以上となると、その時点で採用は難しい。」というような選び方は基本的にはしないということです。
例えば、次の様な例を考えてみましょう。
Aさん:転職回数を重ねているものの、そのどれもが客観的に見て”やむを得ない事情”等が背景にあることが判る
Bさん:転職回数はたった1回だけだが、よくよく話を聴いてみると、これから一緒に働く人材として不安を感じざるを得ないような事由による退職だと感じずにはいられない
という2人の候補者がいたとします。
この場合、転職回数こそ多くても、採用する側から見てみればAさんの方が安心感があるのは言うまでもないことでしょう。
配偶者の転勤や家族の健康問題など、本当にやむを得ず転職をする中で転職回数が重なり、さらに運の悪い事に、転職後に劣悪な職場環境等であることが判明して、また転職をしなければならなくなったなどの事情が重なると、どうしても転職回数が増えていってしまうといったこともあり得なくはありません。
言うまでもなく、仕事に就いてからの細かな業務内容や職場における人間関係、その他職場環境の様々な要素というものは、面接の場や簡単な職場訪問等で正確に掴めるようなものではありません。
自分にとって働きやすい職場環境なのか、どうにもつらい状況に陥ってしまう様な職場環境なのかということは、やはり実際に働き始めて、ある程度仕事に慣れて来てからでないと感じ取ることができない部分だということは誰しもが共感できるところでしょう。
つまり、客観的に見て仕方のない事由等によって複数回転職を経験している場合や、どう見ても異常な職場環境となっている企業等を運悪く選択してしまった場合などに関しては、そうした背景を十分に考慮に入れた上で、その薬剤師本人の経験や能力、そしてやる気というような”定性的”な面を評価して判断することになるということです。
したがって、あなたがもし転職回数2回以上、場合によっては4回、5回といった転職経験があったとしても、その回数の多さだけをもって、余計な心配や不安ばかりを募らせてしまう必要はないのです。
ただし、裏を返せば、前述の様に”回数そのもの”というよりも、その”中身”、つまり「転職から転職までの期間」であったり、各転職における「転職理由」というものについては、当然考慮されることになってきます。
続いてはこの転職に関する「期間」と、その「理由」に関して詳しく解説していきます。
「期間」と「転職理由」
転職に至るまでの「期間」とその「理由」に関してですが、これは採用する側の立場からすると、転職回数が多ければ多いほど「確認しておいた方が良いかな」という感覚が生まれる部分である、というのが正直な所ではないかと思います。
転職回数が複数回に及んでいて、なおかつその期間が「1、2年ごとに何回も」というような場合や、極端な例では「1年間で複数回」というような場合もありますが、いずれにしてもあまりにも短期間の間に何度も転職を繰り返しているような場合には、採用者側も「なぜそうなったのかという部分の確認はしておきたい。」という気持ちが当然わいてくることになります。
もちろん、前述のように、客観的に「多いな」と感じる、短期間での複数回の転職があったとしても、その理由がやむを得ないものであれば何も問題はありません。
特に40代や50代以上というような年齢の方であれば、1つの職場に一定期間(少なくとも3年以上ぐらいが一つの感覚的な目安) 在籍した上で、キャリアチェンジや家族の問題など通常考え得る範囲内での転職が複数回あるといった場合にはそこを問題視するようなことはまずしません。
では、20代や30代というように、若くして転職回数が多くなってしまっている場合はどうかというと、そこで重要となってくるのが、やはりその「転職理由」です。
20代や30代といった若い方でも、最初の職場が自分の想像していたものと大きく乖離してしまっていた場合などで、仕方なく転職をし、次に就いた先も、また運が悪いことに劣悪な職場環境であったなどという場合には、転職回数が重なっていってしまうということもあるでしょう。
こうした場合も、それらの転職に関しては、”やむを得ないもの”と考えておいて大丈夫です。
と、ここで疑問が湧いてきた方もいるかもしれません。
「さっきから”やむを得ない”という言い方をしてるけど、その基準はなに?」
ということです。
解説します。
「”やむを得ない”転職」の具体的判断基準は?
当記事では、ここまで何度も”やむを得ない”という言い方を使ってきましたが、この「”やむを得ない”転職」とは、具体的に一体どういった場合のことを指すのでしょうか。
感覚的には、採用者側が「それなら仕方がないな。」とか、「なるほど、そういうことね。」と納得できるものということになるのですが、より個別具体的な理由をあげるとすると、
- 地元地域等へのUターン (Iターン)
- 結婚・離婚
- 配偶者の転勤
- その他転居に伴う転職
- 子育て環境の変化
- 家族の看病や介護等
- その他家庭の事情
- キャリアチェンジ
- 客観的に見て劣悪な職場環境からの脱出
などのような事由であれば、採用者側も特に疑問を感じるというようなことはないでしょう。
ただし、最後の「職場環境」という部分に関しては、非常に抽象的で判断基準が難しい部分でもあります。
「残業代もなく非常に長時間拘束された上、休日等の保障もないがしろだった。」とか、「陰湿ないじめ等があった。」「小さな会社で社長や上長からのパワハラ・セクハラ等が常態化していた。」などといった場合には、当然”やむを得ない”と判断されてしかるべきかと思われます。
そして、「キャリアチェンジ」に関しては、それがチャレンジングなものであったり、自分の能力を伸ばそうとスキルアップを目指したものであったりした場合には、むしろその意欲的な姿勢を高く評価されることもあろうかと思いますので、”やむを得ない”どころの話ではなく、積極的にアピールをしても良い部分と言える場合もあるかもしれません。
ただし、このあたりの一見”前向きな”転職経験に関しては、次に転職しようとする業界の”欲しい人材像”というものをイメージしながら、自分のアピールポイントとしてどの程度主張すべきかという点についても判断していくのが無難でしょう。
つまり、例えば地方の調剤薬局などのような場所では、あまりにも向上心が強く、成長意欲をもとにチャレンジを繰り返して来たような経歴を持っている人材を、「うちは安定的に長く働いてほしいから、少し不安。」と感じられてしまう可能性もあるということです。
自分としてはそのやる気や向上心を買って欲しいと思い、”アピールポイント”として主張したにもかかわらず、相手側からはむしろ”ネガティブ要素”として捉えられてしまうというような場合もあり得るという、いわゆる典型的な”ミスマッチ”が起こっている状態です。
採用する側としては、やはり「当社でなるべく長い期間活躍して欲しい。」と考えるのは当然のことですので、一般的によしとされる成長意欲の高さといった部分は”プラス評価”となるべき要素であるはずなのですが、一部のケースでは、そういった形で、むしろ採用者側が保守的な姿勢であるがゆえに、不安要素になってしまうといった事も考えられますので、そうした点において、相手企業の「求める人材像」との擦り合わせも非常に大切だという事になります。
ただそうは言っても、相手側(企業側)が求める人材像に擦り寄ろうとし過ぎるあまり、”嘘の職歴”や、あまりにも”お化粧”をし過ぎた経歴を伝えてしまってもいけないのは言うまでもないことです。
最後に、この辺りの”線引き”についても確認しておきたいと思います。
「虚偽記載・嘘」は言語道断
まずはじめに、過去の転職状況、職務履歴等に関し、履歴書や面接時の会話等において、”嘘をつく”ということは絶対にやってはいけません。
こんなことは改めて言うまでもないことではありますが、場合によって「詐欺罪」(刑法246条1項、2項) に問われる可能性のある行為ともなりますので、厳に慎みましょう。
「バレなければ大丈夫でしょ。」
そんな風に安易に考えて職歴等をごまかして記載し、それを前提に内定を受けて実際に働きはじめ、給料を受け取っていた場合などで、会社側がそのこと(職歴の虚偽記載)を知って問題視した場合には、”懲戒解雇”等の処分を受ける事で、その後一生自分の職歴に傷がつくことになります。
面接の場などにおいて、もしもそれらの虚偽記載した部分の職歴等について深く突っ込まれてしまった場合などには、さらに嘘を重ねていかざるを得ない状況になってしまうことにもなりますので、そういったことを考えるのは絶対にやめましょう。
正直に話す&伝え方を工夫する
転職回数を複数回重ねていて、そのどれもが違った事由によるもの、中には「人間関係に馴染めない」といった理由によって転職したこともあった場合でも、大切な事は、
正直に話す
という事に尽きるかと思います。
採用する側も人間です。心労の多い職場であったという事実も、正直にそのことを伝え、その後前向きに仕事をしていきたいという意思があなたから感じられさえすれば、必ず理解は得られるものです。
ただ、その”伝え方”に関しては、少し気をつける必要がある場合も考えられるかもしれません。
つまり、前職で職場の上司や同僚と揉めてしまい、その関係性が上手くいかなくなって転職に至ったという場合など、転職を希望する先の面接官から見て、あまり良い印象には映らないような転職理由がある場合に関しては、うまく伝えなければ、実際よりもさらにあなたが悪いイメージを持たれてしまうリスクがあるという事です。
悪い言い方をしてしまえば、「あなた自身には非がない」と感じてもらえる伝え方ができることがベストであるということです。
これは少々コミュニケーション能力上のテクニックを要する部分ではありますので、そう簡単な事とは言えませんが、できればチャレンジしてみましょう。
やり方はこうです。
もしもあなたが経験した転職の中に、「次の面接でそれを正直に話したら、相手は採用したくないと感じるかもしれないな。」と思われるような理由によるものがあった場合には、「すり替え」のテクニックを使うのです。
あなたが「突っ込まれたら困る。」と思っている転職理由について聞かれたら、その理由以外の「”前向きな”理由」を言えるように準備しておくのです。
例えば、実際には人間関係で揉めに揉めて転職をすることになったのだとしても、キャリアアップや家庭の事情等にすり替えて話をするというようなやり方です。
ただし、前述した様に「嘘」や「虚偽」はいけません。
詳しく掘り下げられた場合に、その受け答えが不自然になってしまいますし、面接官があなたに不信感を抱いてしまっては本末転倒になってしまいます。
ポイントは、「あくまで”前向きな”転職だったんだな。」、もしくは「やむを得ない事情によるものだったんだな。」と面接官に感じ取ってもらえる理由とすることです。
これは、”正直に話す”ということとは真逆の事を言っているように感じられるかもしれませんが、物事の”伝え方”というのは、ことのほか大切です。
自分に不利な話を積極的に話さなければならないというルールなどどこにもありませんし、うまく”歪曲した”形で伝えるという術も、時と場合によっては、理想の転職を勝ち取るという意味ににおいて重要となってきます。
「そんなうまい言い方ができるほど高いコミュニケーション能力を持ってない。」
そう感じる方に関しては、「詳しくは話さない。」という手法でも構いません。
前述の様に、「この転職理由はそのまま伝えてしまうと、悪い印象を与えてしまいかねないな。」という転職経験がある場合に、面接でそこを面接官から問いただされてしまったら、一言二言で「会社側とうまく意思疎通ができなかったからです。」とだけ答えるのです。
さらに突っ込んで聞かれた場合には、「今考えると私ももっと努力出来た部分があったかとは思うのですが、その時はいっぱいいっぱいで転職という道を選びました。」と言った具合に、「反省している。」「今後の自分の成長に繋げられる様に、前向きに捉えようとしている。」といった形で伝えられると理想的です。詳しい事を自ら積極的に話す必要性はどこにもありませんので、これらの要素が伝わるような形で話す事だけを心掛けるようにすれば大丈夫です。
以上が、面接の場などで転職希望の企業側とコンタクトを取る際の”伝え方”といった部分になります。
少しテクニックを要する部分もありますが、基本姿勢としては”正直に話す”、かと言って、こちら側にとって不都合な部分まですべて”馬鹿正直に話す必要もない”ということを意識しておけば、面接で悪い印象を持たれてしまうリスクは軽減できるでしょう。
あなたがたとえ転職回数が多いと感じる経歴の持ち主であったとしても、どんな職種であれ、採用する側にとって、薬剤師に求めるものというのは、「自社内における職務をきっちりと全うしてくれること」、そして「問題行動等なく安定的に勤めてくれること」という点に尽きるかと思います。
そうした企業側の心理も鑑みつつ、会話に自信が無いと感じている方は、事前に話す内容をある程度暗記しておくなど、面接対策を練った上で、本番に臨まれることをおすすめします。
まとめ
さて今回は、「転職回数の多い薬剤師さんは、転職市場で不利になってしまうのか」という点についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。
結論としては、転職回数そのものよりも、その中身の方が重視されるというのが実態です。
2回、3回と転職経験のある薬剤師さんに関しては、それぞれの転職理由について改めて見つめ直してみると同時に、次の転職を狙う際には、どのように伝えるべきかというところまで考えた上で転職活動に臨めるように、しっかりと準備を進めて行くという事が非常に大切です。
最後にお伝えしたように、たとえ「”言い難い”転職理由」による転職の経験があったとしても、その伝え方を上手く工夫することで、相手に必要以上にネガティブなイメージを抱かせることなく、自分のアピールポイントの方に話を持って行くということも可能ですので、今回の記事も参考にしていただきつつ、理想の職場への転職を成功させていただければと思います。
それでは。